NPO法人ともに生きる街ふくおかの会: 本の紹介(2020.01)

2020年1月19日日曜日

本の紹介(2020.01)

 偶然見つけた本を2冊ご紹介したいと思います。

黒川裕子作・宮尾和孝絵(2019)『となりのアブダラくん』講談社
 主人公の男の子は、クラスの中で浮かないように、浮かないようにと生活している小学生。そんな主人公のクラスにパキスタンから男の子の転校生がやってきました。もちろん、日本語は話せません。偶然、「お世話係」になってしまう主人公。二人はどのように互いを理解していくのでしょう。主人公よりもっと素直に、率直に違いを受け止め、相手の立場に立って考え、行動に移せる妹は、男の子の妹と仲良くなります。
 文化の違いに対する配慮は、必要な配慮なのか?それとも特別扱いなのか?
 異文化について、いわゆる「普通」とは異なることについて、保護者を含め学校全体で理解してもらおうとする取り組みの結果は…。是非読んでみて下さい。
 小学校高学年以上の児童書ですが、大人が読んでもとても面白いです。
 異文化理解の話、イスラーム教の理解、そして外国人という違いだけではなく、みんなが少しずつ持っている違いをちりばめながら、ストーリーが進みます。子どもの支援に携わっていらっしゃる方は、自分の知っている子どもたちを思い浮かべながら、読み進めるのではないでしょうか。



織田朝日(2019)『となりの難民-日本が認めない99%の人たちのSOS』旬報社
 非正規滞在になってしまった人がなんらかのきっかけで収容されてしまう外国人収容施設。ときどきニュースでも取り上げられますが、その実態やそうした人たちに対する支援など、なかなか触れる機会がないと思います。著者は収容施設にいる外国人を訪問・面会し、そうした人々に寄り添う支援を行っています。そうした経験から入管に収容される難民や日本育ちの難民の子どもたちの様子、そして彼らに対する支援などについて丁寧に書かれています。
 難民と移民の違いや難民認定制度についても分かりやすく説明され、収容施設にいる人々や認定を待ち続ける人々の思いや彼らが指摘する現行制度の問題点なども取り上げられています。
 こちらも分かりやすい文章で書いてありますが、大人にも子どもにも読んでもらいたい本です。



 ここまで書いて、偶然にも2冊とも「となりの○○」というタイトルでした。
 私たちの身近な、「となり」にいる人々についても思いをはせる2冊になると思います。