続いて本の紹介です。
今度は新書になります。
国籍問題研究会編(2019)『二重国籍と日本』ちくま新書
外国につながる人々と関わるなかで、国籍に関わる話が出てくることがあり、なんとなく分かったような気になっていたりもしますが、やはり複雑です。
大坂なおみ選手をはじめ、ダブルのスポーツ選手がどちらの国の代表として試合に出るのか、二重国籍の場合にどちらを選択するのか、ということが話題になったりしますが、そうしたことを入り口にしながら二重国籍について分かりやすく述べてあります。
蓮舫議員の国籍問題についても大きく紙面を割いて解説してあり、二重国籍問題の複雑さがよく分かりました。さらには世界の潮流などについても触れられており、勉強になる一冊です。
永吉希久子(2020)『移民と日本社会―データで読み解く実態と将来像―』中央新書
移民を取り巻くさまざまな事柄について、例えば、「外国人が増えたら犯罪が増加する」や「外国人が増えたら雇用が奪われる」「社会保障費の負担が増える」など、漠然としたイメージがあります。こうしたことについて、統計データを用いた研究を基に本当にそうなのか?と問い直している本です。
統計と聞くと私はどちらかというと苦手なのですが、わかりやすく解説してあって読みやすいです。さらに、国内外の研究を踏まえているので、なかには地域づくりに関わる研究データが紹介されていたりもして、参考になります。
第3章「移民受け入れの社会的影響」が地域に関わるものになりますが、問題解決が個人に依存していると脆弱であり、それを回避するには移民が自治会活動に関わる仕組みづくりが必要と先行研究から指摘されています。読みながら、これまた香椎浜のことを思い出したりしました。
個人的には、第4章「あるべき統合像の模索」で示される多文化主義政策の指標などは興味深かったです。カナダとドイツの研究者が提示する指標がそれぞれ挙げられていますが、普段ヨーロッパを見ている立場からすると社会のあり方の違いが反映された指標で、いろいろと考えを巡らせました。
この新書に近い形で(著者は社会学がベースなので「違います」と言われそうですが…)移民にアプローチしている新書があります。
友原章典(2020)『移民の経済学―雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか―』中公新書
経済学をベースにしているものですが、扱われる先行研究は永吉さんのものと共通したものが見られます。
経済学と聞くと難しそうだなと思う方もいらっしゃると思いますが(私自身です…)、第6章「治安が悪化し、社会不安を招くのか」では、地域の結びつきと多文化共生や移民に対する日本人の態度などを扱っており、興味深いです。
永吉さんの著書と合わせて読むといいかと思います。
外国につながる子どもの教育や異文化理解に直結するものではありませんが、新書だと手に取りやすいので、是非手にとっていただければと思います。